国内MBAのススメ

人生変えたくなったら考えてみよう。日本のビジネスパーソンにもっと学びを。mbajapan@outlook.jp

金沢工業大学虎ノ門大学院には熱気があった

ちょっと前になるが金沢工業大学大学院ビジネスアーキテクト専攻の説明会・体験授業に参加してきた。進んだ学生支援体制と教育内容で地方私学の改革例としても有名な同大学だがこちらの大学院もユニークさ、チャレンジがいっぱいだった。

今まで気が付かなかった不明を恥じるがここはなんと専門職大学院ではなかった。制度的にはいわゆるフツーの大学院のまま一専攻としてビジネススクールを運営している。(取得学位は経営情報学修士)そのためか論文は必須というのも特色のひとつ。たった20人の院生を44人の教員(うち8人は専任)、そして最大5人のゼミ(研究室)が鍛えるという密度の濃さ。

最初の「授業」は主任教授の三谷宏治先生。三谷先生のお話は他にも伺う機会があるのだがいつも判りやすいのに高い視野とさまざまな角度からのものの見方を整理して提示してくれる。今日はご自身の最近の著作「経営戦略全史」の内容紹介をつかみにスタート。国や地域ではなく文字通りグローバル、世界全体での経済成長率の変遷の数字にまず「へー」となる。ぼやっと気が付いていてもグラフや数字で21世紀に入ってからの成長加速にはおどろかされる。そしてGDPと資源消費の関係(ほぼ比例なのだ)、その間のVIXボラティティ指標(別名恐怖指数:投資家心理を表すのによく用いられる。リーマンショック時90、ユーロ危機時40現在20)の変化グラフを重ねて見せてくれる。さらには世界の複雑化・グローバル市場化がもたらした「ブラックスワン(予測不可能な世界)」の説明に移る。

結局はこんな世界(日本もその一部に過ぎないのだ)では自分が強くなるしかない、個人の力・突破力がものをいう時代になるのだ(だから大学院で勉強しなおそう)というような結論にいたる。まったく同感。

次の授業はMBAカリキュラムの花ともいえるマーケティング。ATカーニーの現役パートナーの関灘茂先生。自己紹介の後いきなり「ハードカバー(書籍)の売り上げの環境分析を1分かけてやってみてください」という課題。要するにどんな情報が少なくとも仮説的に考える、常識を総動員して考えるくせをつけるためのアタマの体操的な内容。その後もいくつかのディスカッションテーマをこなすのだが内容はすべて教科書的なマーケティング用語や概念の説明ではなく市場機会、セグメンテーション、ポジショニングをきちんと構造的に理解して自分で考えましょうということだ。ときおり実務上の知見も交えてくれるのでたいへん判りやすい。こちらも徹底的に考え方を身に着けさせるという大学院の姿勢が強く感じられた。

実務経験者(あるいは現役実務家)教員による濃い講義と少人数での議論・発表によって徹底的に鍛え実践的な技とする教育方針は見事に実践されているようだ。在学生の平均年齢が38.8歳とやや高めなのも特色だが本当に自分を鍛えたいという人がラストチャンスと思って入学するのかなと思った。

人数が少ないせいが全体でもランキングでは上位に出てこないKITではあるが「カリキュラムが充実」「教授・講師陣が優れている」の項目では堂々1位なのは見逃せないかもしれない。(社会人のランキング2014:日本経済新聞社