起業にMBAは役に立つのか
私の年代(1980年代にMBA取得)だと、当時まだ専門職大学院制度も発足前だったこともありMBA取得というと圧倒的に企業からの派遣、あるいは外資系への転職あるいは大企業内でのキャリア・実務能力補完のための勉強という意味合いが強かった。
しかし今、もっと若い世代、とくに20代のMBA志願者、在学生の方の中には取得後起業を目指してる方が増えている。大学院によってはアントレプレナーのコースを設けているところもあるくらいだ。
起業を目指す人がMBAで学ぶメリットってなんだろうか。簡単ではあるが整理してみたい。
1.やはり経営とはなにか、事業を推進するにあたってのひととおりの知識を集中的に学ぶのはMBA取得が最も効率的。人に任せる部分(たとえばマーケティングは経験ある方にまかせるなどのような場合)でも基礎知識があるなしではその道の人との議論のスピードが異なってくる。
2.もうひとつ意外と大きいメリットは人間関係の構築・人間力強化。
単に人脈といえばそれまでだが、さまざななバックグラウンドの人たちと少人数の授業やゼミの活動の中で議論する経験は大きな資産になる。経営のロジカルな部分の勉強以外にも仲間から信頼を得る工夫をして自分の意見を述べるといった機会を日々異なる経験値をもった同級生と行えるのはMBAの大きなアドバンテージ。
実際「ビジネスパーソンが大学院で学びたいこと」(日経・日経HR調査2014年6月)で2番め、31%の調査対象者が「人脈を構築したい」をあげている。私も引続き調べてみるが同窓会活動が盛んな大学院という選択基準もありだ、
これはびっくり「育休プチMBA」
また別の機会に書こうとは思っていたが、女性が育休期間にMBA取得を目指す動きが活発になっているそうだ。こちらの雑誌の記事にも紹介されている育休女性の勉強会も流れとしてはそれを汲むものといってよいのだろう。
授乳しながら学べる「育休MBA」(1/4) | 新・会社論 | PRESIDENT WOMAN Online | PRESIDENT Inc.
この活動はいろいろな工夫を重ねていることと推察できるがすでに内輪の勉強会の域を超えている。今後の発展も楽しみだし、そこから大学院にあらためて進学しようという動きにもつながってくるのではと期待している。
女性がMBAを取得するメリットは、男性と比較しての議論になるが総合職制度発足30年経った現在でもいまだ経営や会社の機能、システム全般を俯瞰的に見る機会に恵まれていないハンディを一気に縮められることにあるのではないだろうか。体系的に経営の仕組みを短期間で身につけ実キャリアを補えるメリットは私が主張するMBAの最大のメリット。
さらにそれをどう活かすかということについては、課題も多くけっしてバラ色ではないだろうが育休という人生の助走期間にMBAの学びを志すというのは男性、いや社会全体にとってもプラスは大きい。
リアリティあふれる記事 「MBAをとって私たちはこう変わった」(主催=日本経済新聞社、日経BP社)5月23~24日
女性のための総合イベント「WOMAN EXPO TOKYO 2015」からの記事。
今どき国内MBA女子のリアリティがあますところなく語られているという印象。
広報提灯記事でもないし特別なサクセスストーリーでもない、いまどき国内MBA進学のリアリティを感じる良記事。
ハイブリッドな学び ボンド大学MBA
最近仕事で関係した方からこちらの大学院についていろいろ伺うことができた。この方、30代前半に転職を考えた際人材会社からMBAを持っているかという問いかけをきっかけに必要性を感じて取得を目指したそうだ。
そこでいろいろ考えた結果選んだのがボンド大学。当BLOGは「国内MBAのススメ」とうたっているので恐縮、こちら厳密にはオーストラリアのMBAだ。日本で大半のカリキュラムをオンラインで受講できるのでそこは勘弁して読んでほしい。
この大学院はオーストラリアまで出向いての対面授業、修了(卒業)時ののプレゼンテーション(英語でのプレゼンテーションが修了要件)など純粋の国内とは異なる貴重な経験がいろいろできたそうだ。「ビジネスプランニング」を中核カリキュラムにおいているところも納得できる。実はこのスキルは外資系でのサバイバルには必須。
看板といってもいいと思うが大前研一が指導してくれるというのもそれが魅力と思える人には魅力のひとつ。人によってではあるだろうけどびっくりするくらい身近な先生として大前氏に接する機会があるそうだ。(厳しそう)ここのWEBサイトはぜひ見てほしい、別にここに入学を考えているひとでなくてもMBA取得の意味、どんな勉強をどんな方法でするのかな、卒業したらどうなるのかなど親切丁寧な情報が満載。
オンライン、リアル授業のグループワーク、国内・海外での学び、他大学院でも指導実績をもつ多才な教授陣など「幅の広い学びの方法」を提供してくれる大学院ではないだろうか。
あらたな常識:大学院修了者が学歴の基準になる時代
国内MBA大学院も制度としてまだ不安定な面もあったり、大学院間での学生獲得競争も厳しさを増しているなど先行き楽観は許されないのだろうが、まずは社会人教育のひとつとして定着したと言ってよいのではないだろうか。
リーマンショック以降顕著になったが、不況で仕事の量が減ったため通い易くなった人が一念発起、あるいは割増退職金で心機一転のためMBA取得という人が目立つようになったと感じている。
ポジティブな見方をすれば、自分自身と会社そして経済社会の関係を再構築するための大学院での学びを始める人は確実に増えたのではないだろうか。
日本で長年「学歴社会」と言われてきたものは、完全に偏差値序列による学校名重視の問題であった。確かに昔は「学士様」というのが最高権威として将来を保証する身分だったことすらあったくらいだ。この偏差値序列により学校名重視は名声だけでなく予算配分や研究費獲得の序列にも直結するので根が深い。
この長年の構造を変えるきっかけになったのが大学院制度の改革だ。学部の入試の偏差値序列なんてのは国内でしか通用しないし、そもそも学部だけどんな有名大学だけ出ていても取得が不可能あるいは実質門戸を閉ざしている国家資格も多くなってきた。(教員もそうなりつつある)意外と知られていないが国際公務員の多くも応募資格を「大学院修士課程以上」としている。MBAは会計系の専攻でない限り直接資格に結びつくものではないが戦略、会計管理、マーティングなどそのカリキュラムで学んだことを活かす場はグローバル化、デジタル経済の進展に伴い確実に増えている。
「高い偏差値序列の学部卒業生より大学院修了者」という常識の定着が見られる日も遠くないだろう。
ワセダの挑戦は続く
早稲田大学ビジネススクールがまた来年改組、カリキュラムなども大きく変わることが発表になった。
大学全体としても何かと比較される早稲田と慶應義塾だが、ビジネススクール(MBAコース)に関しては慶應義塾が大学院(KBS)開学以来、一貫してフルタイムの「経営管理研究科」で通してきたのに対し、早稲田は古くはアジア太平洋研究科に始まりフルタイム、夜間主、夜間主プロフェッショナルと多才なコースを提供し続けている。
それがここにきて更に進められたというべきなのか、来年4月入学からは財務・金融関連の大学院と統合してより幅広いニーズに応えるそうである。なんと名前は大学院経営管理研究科と王道な名称となる。
興味深いのは実務経験不要の英語コースなど20代の院生獲得を積極的にうたっているところ。今までの日本の大学院にはなかった傾向ではないか。これも慶應義塾と対照的、あちらはエグゼクティブ層にフォーカスした新コース。
その早稲田ビジネススクールを引っ張ってきたディレクター氏が慶應義塾大学(KBS)出身(学部は京大)というのも面白い。
なにやらMBAのデパートの様子になってきたワセダの挑戦はどんな成果をもたらすか要注目。入学希望者は説明会などに参加してじっくり選ぶことが大事。
よく混同されるケースメソッドとケーススタディ
ケースメソッドとケーススタディ、この2つはMBAの教育方法、授業の進め方でよく出てくる大切なことば。あまり区別されず混同されて使われることが多いが実はかなり異なる。
ケースメソッドとは、あるテーマの学習目標を達成するために、意図的に構成された事例で、意思決定に必要な背景要因、検討プロセス、各ポジションの登場人物、、企業や事業をとりまく環境、失敗・成功などの顛末などから成る読み物を使って学ぶやりかたで、元祖ハーバード大学ビジネススクール(HBS)が有名。日本ではHBSと提携した慶応(KBS)がこれを全面的に取り入れている。
ポイントは答えがあるようでなく、学ぶべき課題から学習者自らが考えていかないとならないという主体性を求められるところ。もちろん専門知識や前提条件となる基礎知識はですでに持っていることが前提。
他方こちらもMBAの世界でよく使われるがケーススタディ(事例研究)は教材作成側が事実に基づきあるテーマ、学習目標を「教える」ために使われる教材である場合が多い。また院生の場合だとある研究テーマの仮説検証・理論構築のために実際の企業の意思決定や戦略についての「事例」を研究するといった流れで使われることもある。(もちろん、KBSの場合は院生がケースメソッド用のケースを作成することも推奨されているがこちらは大学院への貢献の意味合いが強い)
大学院の教育方針、性格などによってこの2つの取り入れ方はかなり異なる。入学前のチェックポイントにしてみるこをおすすめします。
ビジネス書に見る国内MBAホルダーの活躍「行動する勇気」杉山大輔
KBS(慶應義塾大学大学院経営管理研究課)出身、若干34歳であの元ソニーCEOが創立したクオンタムリープの執行役社長をまかされた杉山氏の著書。
ポジティブさを全面に出したよくある自己啓発書のようだが、日米で受けた教育、生活体験からのコミュニケーション論などユニークさが随所に光る内容。自らもコミニュケーションをコンセプトにした企業を経営されている。
全体としては、ビジネパーソンに必要なコンピタンスを構成する要素について著者なりに分解して再構築しているところが印象に残った。
「チャンスをつかむために必要な5つのキーワード」「前へ!進むために必要な3つのC」などは、今まで言われてきたような内容をそのまま持ってきたのではなく、著者が自分自身でポジティブに生きようと考えぬいた結果として整理、それぞれの言葉の意味を再確認している。
面白いのは、体系的な経営学を学びたくてKBSに入ったそうだが具体的な目標が持てずにいたということ。それでも700のケースメソッドに取り組んでいるうちにビジネスにも興味が増し考え方も変わってきたそうだ。
若い世代の人や、大企業での長い勤務経験がない場合にこういったパターンで入学はよくあると思うが、これはこれでいいと思う。
それにしてもKBS出身者は本を著す人が多い。元ボストンコンサルティングの内田和成氏(早稲田大学ビジネススクール教授)は別格としても、比較的若い世代のOBでも自分のチャレンジ体験を書いている人は何人かいる。またの機会に紹介したい。
国内MBA入試のために受験勉強ってどれくらいするの?
国内MBA大学院(専門職大学院経営)の入試、受験に関する情報はさまざまなガイドブックや、主要新聞の教育特集ページで大量に情報発信されるようになった。しかしそれらの情報の中には、日本の受験の世界でおなじみ?の「偏差値」や「難易度」の具体的(数値的)データを見ることはほとんどない。
それはそうだ、院の入試は面接や研究計画など適性や意欲などを個別に判定する仕組みで入試を行っているので画一的な偏差値議論には馴染むはずがない。
このあたりは志望者が受験に際して悩むところのひとつらしい。それまでの受験勉強偏差値慣れしているアタマでは「どれくらい入試の準備をしたらいいのだろう」「レベルは?」と不安になる場面もあるようだ。これって偏差値病?
大胆にいってしまうとテクニックとしての受験勉強はやめよう。
受験の準備の内容そのもの、面接や研究計画書に何を書くかなどは大学院側も詳細な情報を発信しているのでイメージをつかむのはそう難しくはない。悩みどころはレベル感。実はこれ大学院によってぜんぜんちがう。
ひとつ言えることは、大学院は「入試のための勉強と準備がある程度必要なところ」とそう必要でもないところの2つに分類できる。ただどちらもごく一部を除いて「落とすための試験」ではない。
また偏差値序列で「ランク」なんて意識はもたないほうがいい。MBAは通えるところでなるべく早いタイミング「勉強」することが大事。入試難易度の高いところへのチャレンジなんて考えは不要だと思う。
関東圏の情報しかヒアリングできていないが、教員、院生共にからやはり慶応、一橋、筑波、早稲田、青山学院、中央あたりは入試、計画書など一定時間かけた準備が必要だとおっしゃっていた。ちなみにこれらの名前は実績のある国内MBA受験予備校の
国内MBA受験専門予備校 ウインドミル・エデュケイションズ株式会社
の受験・合格データともほぼ一致する。
自分は勉強したいテーマからどうしてもこの大学院に行きたいけど準備が足りていないと感じたらこういった予備校で短期間に対策を練るのもあり。
2015 年明け開催予定 注目の公開講座その2 金沢工業大学(KIT虎ノ門)
情報発信に力を入れている金沢工業大、今年も志望者向けににさまざまなプログラムが並ぶ。今日紹介するのは通常の公開授業とは一味ちがう「K.I.T.プロフェッショナルミーティング | 虎ノ門大学院とは | ビジネスと知的財産のプロフェッショナルを育成する1年制の社会人大学院」。
「各分野の第一線で活躍するプロフェッショナルと出会える場所です。一流と対峙することで、一流に近づける」、虎ノ門キャンパスに集い、さらなる高みを目指してください」とうたっているが、すべて無料という気前のよさ。
やはりコトラーは人気があるのか、訳者でもある杉村教授の「コトラーのイノベーション・ブランド戦略」は早々と満席受付終了になってしまったったがまだまだ魅力的なコンテンツが並ぶ。
私が注目しているのは2月12日の「『携帯電話・スマートフォン開発の裏側で繰り広げられる国際標準をめぐる対立』−知財ポリシーの最新動向とNOKIA、KDDIの取り組み− | 虎ノ門大学院とは | ビジネスと知的財産のプロフェッショナルを育成する1年制の社会人大学院」だ。モバイルの国際標準化活動の最前線で活躍するNokia、KDDIなどから3名の講師が参加し2時間半をかけるといった濃そうな内容。
ちなみにKIT虎ノ門はいわゆる経営専門職大学院と思われがちなのだが、伺ってみると大学院工学研究科の一専攻という成り立ち。これはいわゆる国内ビジネススクール(広い意味で)としては珍しい位置づけ。その心は分離融合型社会人大学院を目指すということらしい。知財、特許関係でのコンテンツ、カリキュラムに力を入れているのも納得。
やはり最近の実体験を読むのが一番 MBA在学生・修了生のBLOG
こんなBLOGを書いている私ではあるが、実は修了したのはずいぶんと昔の話。現役在学生の知人・友人や仕事なども出交流ある教授陣はたくさんいるが所詮自身の経験に関しては過去の話だと思っている。
やはりいちばんリアルに今の大学院の様子をリアルに知る方法は、現役院生あるいは最近終了した方の書き込まれたBLOGを読むというのもひとつの有力な方法。
それにしてもなぜか筑波と中央にはBLOGGERさんが多いような気がする。
まだまだ貴重な情報発信源になっているBLOGはたくさんあるとは思うけどまずは以下を紹介したく。新しいBLOGも登場することだろうから適宜追加します。
中央大学ビジネススクール(MBA) 第3期生ブログ(2010年4月入学)
こちらは博士課程の院生だけど教科のことなど書き込まれていて読みがいありです。
実務・資格指向のMBAもあり
2003年に始まった専門職大学院制度の定着に伴い日本のビジネススクールも様々な個性を出し差別化を図るようになってきた。そんななかでもひとつの方向は、「学位(専門職修士)」だけではなく士業の資格を同時に取れるあるいはその一助になるといったカリキュラムを打ち出している学校もある。
筆頭格は積極経営の目立つ名古屋商科大学大学院。ここはずばり中小企業診断士取得、あるいは税理士受験科目3科目免除といった明確なコースを用意している。グローバル・ビジネスやベンチャー・企業といった方向性とはまた違うけど日本的MBAのひとつの方向かもしれない。
私の思いとしては、MBAの価値はリーダーシップ、戦略立案・実行といった定量化しにくい部分(=人間力)の養成にあるのではというところがあるが、決してこういった資格・実務指向のプログラムと対立するものではない。